当院では診療所という特性上、主にローリスクの分娩をお受けしています。近年ハイリスク分娩が増え、総合病院では学生が介助できる分娩が減ってきている現状があり、診療所で正常産の分娩介助を経験してもらうことで助産実習の一助となればと感じています。
コロナ禍の実習で様々制限がある中ではありますが、対面での実習だからこそ感じられることを大切にしたいと思っています。助産診断やフィジカルアセスメントの学びだけではなく、産婦さんと陣痛の時間を共にして心から産婦さんに寄り添うこと、そして赤ちゃんの誕生を共に喜び、お産に携わることの喜びを感じられるような関りを目指しています。実習期間が長期に渡り、学生は時に落ち込んだり涙することもあります。そんな学生の実習を支えたいと、当院では学生一人一人に色紙を準備し、分娩介助1例ごとに学生側からとスタッフ側からメッセージを残しています。メッセージはできた事やうれしかった事などプラスの事だけを書き、10例に達するころにはメッセージでいっぱいの色紙になり、最終日に学生にプレゼントしています。学生が実習を終え、成長していく姿は私たちもうれしく感じます。
私たちが先輩助産師から学んできた助産の知識、技、心をこれからの助産師にも伝えていけるよう関わっていきたいと思います。
私は,臨床指導をする上で大切にしている事が4つあります。1つめは,臨床で少しでも多くの経験をしてもらう事。2つめに,自分達の助産や看護の実践の場で,看護を語り伝える事。3つ目に,学生が自らの経験を言語化し,意味づけできるような発問をする事。4つめが,学生が委縮することなく,上記3つの事が出来るような学習的雰囲気を作る事です。指導に携わり始めた当初は,正しい知識を一方的に押し付け,学生の間違いや不足している部分を指摘する事が多く,学生の成長を促す関りが出来ていませんでした。しかし,様々な学生との出会いや研修での学びから,上記を意識し関わるようになりました。その上で,助産や看護の方法に完璧も正解もなく,対象や関わるスタッフの数だけ,それぞれのアプローチがある事,助産や看護の奥深さや,やりがい,楽しさを伝えていきたいと思っています。また,臨床で働く助産師も完璧ではなく,学生から新しい知識をもらいながら共に学び,成長していっている事を伝える事で,以前よりリラックスして指導をする事ができる様になりました。近い将来,一緒に働く仲間となる学生の指導を今後も楽しく取り組んでいきたいと思います。
臨床指導にあたり教材観、指導観、学習者観の三観を大切にし、指導に携わっています。学生が知識・技術・実践においてどの程度のスキルがあるのか、また学生の弱み、強味を十分に理解し学生に合わせた指導することに力を注いでおります。
指導者観では、助産診断を行い一緒にケア展開するにあたり、アセスメントのずれの修正を行うことにより、学生が少しずつ根拠を基に助産診断することができるよう促しおります。また、細目にリフレクションを行い、助産師として働く上で大切にしている価値観や考え方を学生に伝えるようにしております。経験からの学びを有効にとらえアセスメント能力・技術も少しずつ向上できるよう促しています。
臨床指導の中で、学生の成長には個人差がありジレンマを感じることが多いと思いますが、学生の学ぶ力を信じて待つことがとても大切となります。
なかなか、学生の自律と理解を促進する指導は難しいですが、「繰り返し経験させる、振り返る、学生とともに課題を見出す、学生を勇気づけ出来たことは褒める」ここを反復させば、学生・指導者が共に成長できると信じております。
みなさん、大変ですが学生の成長を楽しみながら共に頑張りましょう。
私は現在の職場で助産師の実習指導に携わるのは今年で4年目になります。最初の頃は自分も学生だった時期が近く、学生の思いもよく理解できていたように思います。しかし、たった4年間で考え方や学生への関わり方は変容していったようにも思います。
それはやはり自分もまだ助産師として未熟であり、学生に嫌われたくないとか、良い人にみられたいなどの思いがあったからだと思います。そうかと言って今が良い指導ができているのかと問われるとその点はまだ自信はありませんが、初期の頃に比べると患者様が最優先であり、「患者様にどうなって欲しいのか」ということを一緒に考えることができるようになってきたと思います。
学生に何かを質問されると、自分自身の知識の振り返りにもなりますし、答えを与えるのではなく、考えること・学ぶ機会を与えることを念頭に置いて指導出来るようになりました。
みなさんも学生と接して行く中で、迷いや苛立ちや不安などの感情が混在するとは思いますが、自分の学生に対する評価などを付けてみると、違う角度からみることもできて面白くなるかもしれません。自分には向いていないと思っても、やっていく中で見えてくることもあると思いますので頑張って下さい。
私が学生の実習を担当することになった際、まだ臨床の立場でもプリセプターなどを経験していなかったため、3年目の私ができるのか、どのように教えればいいのだろうかと不安がありました。しかし、学生さんの考えや報告を聞いていると、「観察をして、どのようにアセスメントしたのかな?今の観察はできているけれど、この先を予想できているかな?」などと確認したいことが自分の中で出てきて、学生さんの考えを聞きながら、一緒に確認していくことができました。このことは、私自身も基礎の振り返りができたとともに、自分自身の成長も感じることができた経験でした。そして、患者さんと関わる時と同じように、この学生さんはどんなキャラクターなのか、この学生さんの強みはなんだろうと考えながら接することも必要であり、学生指導とは難しいなぁとも感じました。 数日間の関わりでしたが、妊婦さんや私たちスタッフに対してとても緊張しながらも、真っ直ぐに頑張ろうとする学生さんと共に、お産の神秘や身体の変化の早さに驚き、改めて、女性の素晴らしい体験に携わることができるいい職業だと感じることができました。
助産師学生が実習にくるたびに、分娩介助実習の24時間の実習の大変さ、緊張の中にも生命の誕生に喜びを感じていた自分の実習を思い出します。臨床指導者には「実習にくる学生に、助産師の役割の大変さや責任を理解してもらうこと、助産師の素晴らしさや生命誕生の喜びを感じてもらうこと、さらに助産師になりたい気持ちを強くもて、実習を前向きに取り組めるように支える」役割があります。さらに臨床実習者は、産婦、他のスタッフ、産科医師、新生児科医師など実習に関わる人達と学生をつなぐ役割もあります。陣痛の痛みで過ごしている産婦や胎児の健康状態を確認しつつ、助産診断をまとめながら、助産ケアを学生が実践できるようにするためには時間との戦いもあります。また、分娩介助のフォローの難しさもありますが、学生の表情や動きをとらえながら、実習が安全にできるように関わることが大切です。学生実習をサポートすることは時間もかかり大変ですが、助産師として新鮮さやエビデンスの見直しができる機会をもらえる時間でもあり、自分の助産師としての成長につながります。みなさんも是非学生から新鮮さを学びながら共に成長していってください。
臨床指導者として学生指導に携わるようになって5年程経ちますが、毎年、試行錯誤をしながら指導にあたっています。
指導にあたる際には、学生1人1人の性格などをできる限り把握して、その学生に合わせた指導を行なうように心がけています。限られた期間の実習でより多くの学びが得られるように、担当教員の方とも密にコミュニケーションを図り、各学生の情報を収集して指導の参考にしています。また、他スタッフへもその情報を伝達することで、指導の統一ができるようにも努めています。
毎回、学生指導は難しいと感じますが、実習が終了する頃には学生個々の成長がみられ、指導者としての充実感を得ています。それと共に、自分の指導を振り返ることで、学生を育てることの難しさや楽しさなど、自らが学び得たことを整理するよい機会となっています。
実習指導者の大きな役割は、学生が実習しやすい環境を作るということがあげられると思います。学生は施設に実習に行くというだけで緊張感と恐怖心でいっぱいです。自分からスタッフに声をかけるなんて一大事なのです。でもその反面いろんなことを学びたいと一生懸命なのです。そんなときスタッフから声をかけてあげてください。学生の緊張感がほぐれ第一歩をふみだすことができます。そして次に学生の考えをよくきいてあげてください。まだまだ考えが偏っていたりポイントがずれていたりということがあるかもしれません。でも何かひとつ理解し実感できるとそこから前へ進んでいくことができます。否定的に接するとパニックになってしまいどうしてよいかわからなくなります。できていることを肯定しそこから前へ進めるよう助言してあげてください。また同時にスタッフにも学生の情報を伝え指導の方向性を統一していく働きかけをしていくのも大切です。時には他のスタッフとの学生指導に対する考え方の違いで思い悩むこともあるかもしれませんが。大変な役割ですが頑張ってください。